やはり北斎の美術展となると、やはり行っておかなければという気持ちになります。
森アーツセンターギャラリーで催された「新北斎展」に行ってきました。
北斎の20歳から90歳の絶筆までの作品の中から、約480件の作品を観られる展覧会。
初公開のものもあって楽しみにしていました。
北斎の画業を6つの画号の時期に分け(実際には30数個あったそうですが)、作風の変遷を追った大規模展です。
春朗、宗理、葛飾北斎、戴斗、為一、画狂老人卍と画号を変えながら生きた長い人生は、描くほどに年齢を重ねるほどに衰えるどころか進化していく様子がわかります。
何度見ても美しい「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」も。
「諸国名橋奇覧 かめいど天神たいこばし」
先日訪れた亀戸天神社の太鼓橋を見つけたときはうれしくなりました。
実際見た景色を江戸時代の北斎が描き残しているのを見ると、なんだか不思議な気持ちになります。
時間を超えて繋がっているような。
若い頃の浮世絵も素敵ですが、晩年に描いた肉筆画は鬼気迫る表現。
どちらかというと北斎の浮世絵や版画の名作よりも、晩年の肉筆画の方が好きです。
肉筆画を本格的に描き始めたのが、80歳を過ぎてからというから驚きです。
鬼と戦う弘法大師と犬が描かれた「弘法大師修法図」が描かれた、西新井大師の縁起とされるこの肉筆画。
流行した疫病(疱瘡)を鬼に見立て、鎮めるために祈祷する弘法大師空海を描いたものといわれています。
北斎が90歳のとき「あと10年、いやあと5年命が保てば真正の画工になれたのに。」と言い遺しこの世を去ったのだとか。
命が尽きるまで進化し続けるためには、このくらいの向上欲がなければとても到達できない領域なのでしょうね。
5年後の北斎の作品がみてみたかった。
今回の出展のうち永田コレクションは東京でみることが出来るのはこれが最後。
永田生慈氏の遺志により島根県に寄贈され、島根県のみで公開されることになりました。
これからは島根に行くことが多くなりそうですね。